2012年10月15日月曜日

empowermentについて

上司の才能とは、empowerment(権力譲渡)に尽きる。

個人の仕事のやりがいというものは
1.誰かの役に立っていると実感すること
2.裁量の広い仕事をやって自尊心を満たしていること
この二つに収束する。やりたいことをやれば幸せになれるという訳ではない。
勿論面白い仕事をした方が良いに決まっているが、経験的には長く続けられるのは【他人に喜ばれる事が実感できる職業】である。

2-A 大企業
これを満たすためには飛び抜けた実力がある、もしくは事前に一定の実績がない限り少なくとも数年は我慢しなくてはならない。上司が無能だった場合はこれは良く当てはまる。しかしempowermentについて理解のある上司だったらこれは当てはまらない。出来るか出来ないかギリギリのラインの仕事をこなしていくのが最も効率よく実力を付けるための方法だということを上司がよく理解しているからだ。要するに2-Aを満たせるかどうかは上司と裁量による。

2-B 中小企業
当然だが仕事量が増える。しかし裁量が増えるかどうかは上司による。雑用ばかりやらされていては腐ってしまう人もいるかもしれない。で、この場合の問題は自尊心が満たされるかどうかだ。町工場のような職種ではいくら裁量が広くても役に立っているという実感は少ないだろう。だから中小の場合は【誰かに教えて、役に立てたと言う実感が得られる職業】或いは【自分が作ったものが顧客に届いて喜ばれたことが実感できる職業】であることが要求される。やはり2-Aを満たせるかどうかは上司と裁量による。

2-A、2-Bどちらに関しても確定しているのは、 他者に【安く見られてはいけない】という事だ。

結局2を満たすためには
・大企業で部署で一番になること
・教育関連の中小企業で一番になること

これが必要となる。仮に自分の仕事が他人に喜ばれるものだとしても、会社からあしざまに扱われる状況ではその実感は薄くなってしまう。幸福度が減るという奴だ。だから誰かから期待されることが必須となる。【他者の願望が人をその位置まで育てる】。育つためには愛されることが必要なのだ。



1は感謝されること。カタチとして見えやすい
2は権力をもつこと。政治力と言い換えても良い。

ボクの行動原理はいつだって1が優先されやすい。
しかし他者の動きを把握せずに利他だけを行えばどうしても軽く扱われる。
それでスキルが得られるならそれでもいい。しかし単独で行える業務というのはそこまで多くない。
結局、車輪の片方がかけていてはダメなのだ。




特に何も考えずに書いてみたのだが、要するにボクは業務で1のポジションを独占したいのだ。
1のポジションを独占するためには1を作り出す必要がある。その為には2の位置取りが必要だ。

大前提として、empowermentを行える上司が存在する必要がある。

逆順にしてみる。ボクが幸せになるための条件は以下になる。

-----------------------------------
・その部署で一番になれそうなこと
→理解のある上司の下につけること

 →新しい企画を提示できること
  →それを実行できるポジションにつけること

→理解のある上司の下につけること
 →単独で任されるポジションにつけること
-----------------------------------

……幸せになるための大前提として、上司が一番重要ということになる。
上司がダメだったら裁量がないから動けない。それはこの3年間で十分すぎるほど分かっていたことだ(´・ω・`)
結局相手の性格も技術力も、直接会って確認するしかない。

ただこの見直しで確認できたのは、
職種はそこまで重要では無いこと。一番になれる条件として考慮されるだけだ。

2012年10月9日火曜日

そうだん

 いつだって、ヤバくなると現実逃避したくならないか? 俺はそうだ。それじゃダメだって人は言う。俺もそう思う。
 ヤバくなったら受話器を取って幼馴染みのマミナに相談するんだ。
「現実にいられなくなった。ヤバい」
 受話器越しの声はとても優しく耳に響いてくる。
「もう、またなのー?」
「今すぐ会おう」
 一瞬間を空けて、
「んー、えっちなことする?」
「しません」
 このヤロー赤面してるな。

 + + +

 近くのファミレスで待ち合わせたアイツはいつだって落ち着いて、にこにこ笑って周りにマイナスイオンみてーな落ち着き成分を振りまいている。マミナはわずばかりふとましいふとももを覗かせた白いワンピースを着ていて、傍から見ている分には、ベネ(良い)。そしてマミナは俺を見つけるとぱぁっと花が咲き乱れるように小走りでやってくる。花ッつっても梅とかその辺の渋い感じなんだけどな。こういう時は先手を打って男の方が上に見えるようにしておかないといけないので、
「遅いッ!」
 とりあえず社交辞令的に怒ってみる。マミナは怒られるのが好きなので、
「えへへ、待った?」
「待ったよ! 超待った! 二十三秒だッ!」
 俺はストップウォッチを首からかけているので間違いない。俺が起きてから2時間14分30秒たっていた。
 マミナはくすりと笑って、眼鏡のつるを両手でちょこっといじった。
「それ全然待ってないよね。相変わらず器小さいよー」
「器小さいどころかもう俺今すぐバッファオーバーフロー」
「らっぷ?」
 そうかもしれない俺の音楽的センスがここに来て開花してしまったのか! という電撃的衝撃を足の裏辺りに感じた。多分気のせいだ。
「今すぐ行きたいこッこッここココス」
 むしろどもった。マミナは上目づかいで、俺の服の端をちまりと摘んで、
「それって手抜きだね。わたしは落ち着ける喫茶店がいいかなあ……りょーちゃんの落ち着きのなさを中和する的な意味で」
「ちょまいっとくが酸アルカリ何でも中和できるわけじゃない。爆発しちゃう可能性も否めない捨てきれない」
「それもそうだね。じゃあ手を繋ぎましょう」
「ああ」
「はい。これは、おもちゃの手錠です」
 鎖で俺とマミナの手は繋がれた。そうされると安心するのだ。
 マミナは警官だった。おっとりしてるのにな。

 + + +

 カフェーに入ったので俺は可愛い店員の制服をガン見しようとした。
 マミナが手錠でちょっと引っ張ってくる。
「ナチュラルにそういうコトしないで。恥ずかしいよ~」
「うむすまん。しかし人はおっぱいに生まれておっぱいに死ぬ。そんなことを思ったのだ」
「うん、うんそうだね。かわいそうな子、あ、注文アイスティーでいいかな?」
「ああいいぜ」
 近くの店員さんに声をかけて
「そういう訳でまた落ち着きのない時期がやって来てしまいました」
「何故?」
「知らないよ」
「知らないことは知るべきだよ。レッテルを貼るのは簡単。でもそれは思考をやめることだよね。りょーちゃんはもっと考えるべきだよ」
 真剣な顔で諫められる。
「私だって、暇じゃないんだから」
「いつなら肥満なんだ?」
「え?」
「すまんいつなら暇なんだ?」
「私はいつだって忙しいよ。ねえ、私がいなくなったらどうするの?」
 何でこう、唐突に関係のない話題に飛ぶの本当に何とかしてくれないかな。
「物理的に死ぬ」
「精神的に死ぬって言ってよ~~~~」
 マミナは店員さんが置いていった透明なプラスティックのコップについた水滴を指先で弄びながら不機嫌そうに言った。
 悪いけど、そういう共依存的関係を築くのは嫌いなんだ。
 頼りたいけど頼りたくないんだ。本当のところ。等というわけにも言うわけにもいかないので、
「すまん」
「まあいいけど」
 【まあいいけど】といったやつの98%はちっとも良くないと思っている(俺調べ)。
「多分これは働こうとしたからじゃないでしょうか? 俺の中のサラリーマンなりたくない病がまた発病したんじゃないでしょうか?」
 俺は【サラリーマンなりたくない病】なのである。これは日本人の一〇〇人に三〇人ほどがかかる奇病なのだが、別にサラリーマンになりたくないわけではない。ストレスフルな企業でサラリーマンをやってると、胸の辺りがキュッとするのである。心臓がミジンコなのである。このキュッとするのが嫌で俺は暫くGDPに貢献していない無職となっていた。マミナは幼馴染みなのでその辺はよく分かっている。
「傍から見てると元気なんだけどね~」
「過ぎたるは及ばざるがごとし的に察してくれ。それで暇だったからプログラムを勉強したんだ」
「何? Haskell?」
「違うよ全然違うよJavaだよ悪かったな」
「何故?」
「ほら、俺ってもう長い事ニート的存在じゃん」
「そうだよね」
「それで人生設計的なものを考えた時に論理的思考とかが重要なんじゃね? とか思ったわけですよ?」
「うんうん」
「まずは論理力を鍛えるために1年ほどプログラミングを勉強したわけさ」
「……人生設計は?」
「うーん、っていうより引き篭もってプログラミングしてたら、いつの間にか1年経ってたんだ。まだ論理力を鍛えてる最中だから、ちゃんと人生設計は考えられてないよ。でも色々出来るようになったぜ? 聞きたいか?」
「へーそうなんだー。りょーちゃん、それは死んだ方がいいね」
「えっ」
「冗談だよ。りょーちゃんは私がいないとダメでしょ?」
「どうしようもない時にオマエと居ると落ち着くんだ。自分でもヘンだと思う」
「前から思ってたんだけど、本当に必要な時『だけ』呼ばれてるよね。私って、本当に都合のいい存在だよね」
「え……?」
「あのさ。中途半端だよね、そういうのって」
「そうか?」
「そうだよ。中途半端だよ? 何もかも中途半端。必要なら求める。必要ないなら諦める。毎日求めないで、苦しい時にだけ縋る。それってズルくない? 私は神さまじゃないんだよ。りょーちゃんが本当にしたいことは何なの?」
「俺は、……」
 口をつぐんで、絞り出すように言う。
「別に、何もしたくないよ。静かに楽しく生きていきたいだけなんだ」
 マミナの表情は変わらない。いつでもにこやかに笑っている。
「それは嘘だよー。嘘ついてる。本当に何もしたくない人なんかこの世界に居ないんだよ。本当に何もしたくない人がいたら、その人は『もう死んでる』よ。りょーちゃんは誰かに思い切り何かをぶつけたいんだよね。でも、それをカタチにするのがすごく大変だから、面倒だから目を逸らしているんだよね。本気でやるのが怖いから。自分の限界を知るのが怖いんだよね。プログラム本当に好きなの?」
「す、好きだよ?」
「ふーん。本当に?」
「……好きだよ。好きになったんだ。一貫性を保って分析的なものの見方と作業を小分けにして当たるためのトレーニングとして……」
「好きなものには、【どう好きなんて理由はつけない】よ。結局現実逃避のためにまたここに来たんだよね? 本当に誰かを好きになったら、私に会っていちゃいけないんだよ。本当に好きなものがあったら【それ自体が支えにならなきゃいけない】。私に向き合う気がないのなら、ここはりょーちゃんを慰める場所にしかならない。……それは進歩のないことだよ」
「マミナ……。オマエには分からないんだ! 違うんだよ! もうどうしようもどうしようもどうしようもなくなるんだッッ! 一人で出来るなら最初から相談なんかしていないッ! 中途半端にだって、なりたくてなっている訳じゃない! どうしてなんだ!? どうしてこうなっちまったんだ!」
「あのね、そんなに私に付き合うの嫌? ちゃんと会話しようよ。それは会話になってないよ」
「ああ……。そうだな、マミナ、オマエは嫌じゃない。どちらかというと好きだ。俺は普通にしたいんだ」
「うん。普通にしたいよね」
「普通のやつは、こういう独り言は言わない」
「うん。言わないね。独り言はね」
「マミナは何がしたいんだ? やっぱりないのか?」
「うーん。わたしは何もしたくないよ。わたしの100%は優しさで出来てるから」
 マミナは笑った。
「死んでるから」

 + + +

 時たま、魂がふわっとどっかいっちまうんだ。自分が見付からなくなっちまうんだ。
 人混みに紛れて何もかも思い出せなくなってしまう……。
 そうだな、上手く言えないが世界が遠くなる……そんな感覚。
 でも、多分それが大人なんだろう。別に俺が変なんじゃない。
 何とかなる……。そう考えていなければやっていけない。

 + + +

「でもね、りょーちゃん。一言だけ言っておきたいの。誰かの庇護にあるのは、そんなに駄目なことなのかなって?」
「違うんだ。俺は一人で頑張りたいんだ」
「無理だよ。りょーちゃんは誰かに守られて強くなっていくんだよ。それはダメじゃない。誰かに守られていない人なんていない。もしもう一度、全てを失ったって大丈夫だよ。私たちは一人じゃない。わたしが守ってあげる」

 + + +

 俺は目を閉じた。

2012年10月3日水曜日

色々と水面下作業中……ジタバタしてます。